2021/09/23

ピアノという名前の由来について

音楽を学びはじめると、わりと早い段階に、音の強弱に関する用語「フォルテ」と「ピアノ」を学びます。「フォルテ」は強く弾くこと、「ピアノ」は弱く弾くことを意味します*。

*ただし、イタリア語の「ピアノ」には「弱い」という意味は本来ありません。便宜上、日本語で一般的にひろまっている「弱い」という訳を採用しています。

この強弱記号の「ピアノ」と楽器の「ピアノ」、実は本来同じ言葉なのですが、意外とそれに気がつく人は少ないようです。それはおそらく当然で、弱いという音のイメージと楽器のピアノのイメージが結びつかないからなのでしょう。

ピアノという楽器は、1709年頃、バルトロメオ・クリストフォリ (Bartolomeo Cristofori di Francesco)というイタリア人によって発明されました。ピアノは最初からピアノと呼ばれていたわけではなく、発明者のクリストフォリ自身は「Gravicembalo col piano e forte」(グラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ)と呼んでいました。

クリストフォリのピアノ

冒頭の単語、グラヴィチェンバロ(Gravicembalo)とは、当時弾かれていた鍵盤楽器の事です。この楽器は英語ではハープシコード、フランス語ではチェンバロなどと呼ばれています。ちなみにグラヴィチェンバロは外観は現代のピアノとさほど変わらないものの、内部の発音機構が異なっていて(弦を爪弾くことで発音する)、音の強弱を表現することができませんでした。

グラヴィチェンバロに続く部分「コル・ピアノ・エ・フォルテ」というのは、英語で言えば「with quiet and loud」、「弱音と強音をもつ」という意味になります。つまり「グラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」全体では、「弱音と強音をもつ鍵盤楽器」のように訳すことができます。クリストフォリのこの発明の画期的な点、そしてそれまでの鍵盤楽器との大きな違いは、音に強弱の変化をつけれるようになったことでした。

そのあと、この長々しい名前は、短縮に短縮を重ねて「ピアノ」になり、もとの名前も意味も遡ることができないほど短くなりましたが、一方、元のイタリア語ではおもしろいことに、未だpianoforte「ピアノフォルテ」と呼ばれています。さすがは元言語という感じがします。


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