2025/12/27

2025年 クリスマス会

音の木音楽教室の名古屋池下教室にて、昨年に引き続き、日本では二回目となるクリスマス会を行いました。子どもの部と大人の部の二部構成で、総勢30名の生徒さんにご参加いただき、賑やかで温かい時間となりました。

子どもの部では、昨年好評だったキリスト生誕の物語(Nativity)に続き、今年は「Twelve Days of Christmas(クリスマスの12日間)」に挑戦しました。今回は紙人形を使い、歌に合わせて次々と登場するキャラクターや贈り物を視覚的にも楽しめるよう工夫しました。少し長い歌詞ですが、子どもたちは人形の動きに集中し、私たちが思った以上に盛り上がるイベントとなりました。音楽を通じて海外の伝統的な文化に触れる、素敵な機会になったと感じています。

大人の部は、中学生から70代の方まで幅広い層の方々が集まりました。今回はギターの生徒さんが多かったため、特別に編曲したクリスマス・キャロルの合奏を披露していただきました。普段の個人レッスンとは異なり、仲間と息を合わせる合奏は、技術面だけでなく新しい発見も多かったはずです。また、年齢や背景の異なる生徒さん同士が音楽を通じて交流されている様子は、講師としても非常に刺激を受けました。

イギリスから日本に拠点を移し、レッスンを本格的にスタートしてから早いもので2年が経ちました。当初は、文化や環境の異なる日本で「みなさまが音楽教室に何を求めていらっしゃるのか」を模索し、手探りでのスタートでした。しかし、おかげさまで今では次第に多くのお問い合わせをいただけるようになり、少しずつこの地になじんでいく喜びを実感しております。

特に、開校初期から通ってくださっている生徒さんたちの成長には、目を見張るものがあります。技術的な向上はもちろん、音楽を楽しみ、またそれによって人生をより豊かなものにされている様子を間近で見させていただくことができ、これからも一緒に音楽ができることが楽しみでなりません。2026年も、これまでの経験を大切にしながら、皆さまと一緒に新しい挑戦を続けていきたいと考えています。

これから年末に向けて寒さが本格的になってくるようです。皆さまどうぞお体に気をつけて、心温まる年末年始をお過ごしください。






2025/12/05

クリスマス音楽から学ぶ文化教養

今年もクリスマス会を企画しています。前回の子どもの部では、イギリスの学校などでは必ず取り上げるキリスト降誕の物語(Nativity)の紙芝居を行い、クリスマスの本来の意味について触れる機会となりました。今年は「十二夜(Twelve Days of Christmas)」——クリスマスから公現祭までの12日間——をテーマに、さらに深くクリスマスの世界を探求していきたいと考えています。

さて、クリスマス会の準備を進める中で、何人かの中学生の生徒とクリスマスの曲について話をする機会がありました。「どんなクリスマスの曲を知っている?」と尋ねてみたところ、生徒が答えてくれたのは、トナカイやサンタクロースが登場する曲ばかりでした。「赤鼻のトナカイ」「ジングルベル」「サンタが町にやってくる」など、楽しくて親しみやすい曲たちです。

もちろん、これらの曲も素敵なクリスマスソングです。しかし、イギリスやヨーロッパでは普通に歌われているキャロルや讃美歌、たとえば「きよしこの夜」や「もろびとこぞりて」などについては、あまり知らないという反応が返ってきました。

もちろん生徒によって知識の差はあると思いますが、この会話から、日本におけるクリスマスの受容のされ方について考えさせられました。日本では、クリスマスは楽しいイベント、プレゼントをもらえる日、ケーキを食べる日として定着しています。サンタクロースやトナカイといった、ファンタジックで視覚的にも楽しい「お祭り」の要素が前面に出ているのです。

一方で、クリスマスの本来の意味や、その背景にある文化的・宗教的な物語については、触れる機会が少ないように感じます。クリスマスの核心を歌う讃美歌や聖歌は、意外と知られていないのが現状なのかもしれません。

ここで考えたいのは、クリスチャンであるかどうかに関わらず、クリスマスという文化的イベントを理解することの意味です。

クリスマスはヨーロッパをはじめ、世界的に最も大きな文化的イベントの一つです。日本においても、クリスマスはすでに大きな年中行事の一つとなっています。街はイルミネーションで彩られ、様々な商業施設でクリスマスイベントが開催され、多くの人々がこの時期を楽しみにしています。それほど大きなイベントであるならば、その起源や本来の意味について、少なくとも教養として知っておくことには価値があるのではないでしょうか。

日本では、クリスマスという文化イベントがあまりに商業主義に傾いているため、本来不可分である音楽が切り離されて受容されているように思えます。降誕の物語、その喜びや厳粛さを表現する讃美歌やキャロルは本来クリスマスという文化イベントと不可分なものです。ところが、トナカイやサンタクロースの曲だけが広く知られ、核心を歌う音楽はあまり知られていない。これは、文化との深い繋がりを知る機会が少ないことの表れなのかもしれません。

音楽を学ぶということ

ここでさらに深く考えてみたいのは、私たちが日々触れているピアノやギターという楽器そのものについてです。これらの楽器とそのレパートリーは、西洋で生まれ、発展してきたものです。私たちが手にしている楽譜やその記譜法のシステム、演奏している曲、そこで扱う技術は、西洋の文化や歴史、思想や宗教とは決して切り離すことができません。

音を表面的になぞることは、練習を重ねれば誰でもできるようになりますし、もしかするとコンクールやコンペティションには勝てるかもしれません。しかし、そもそも音楽は指の俊敏を競う競技などではありません。その音楽を本当に深く理解し、表現するためには、その背景にある文化、歴史、そして物語を知ることが必要です。

幅広く分厚いレパートリーを持つクリスマスの音楽は、まさにその入り口として最適な題材です。なぜこの曲が生まれたのか、どんな思いが込められているのか、どのような文脈で歌われてきたのか。そうした周辺の知識を含めた教養があってこそ、音楽は単なる音の羅列ではなく、意味を持った表現となります。

楽器を学ぶということは、技術を磨くことだけではありません。その楽器が育まれてきた文化的な土壌を理解し、豊かな背景の中に音楽を位置づけることができるようになること、その上で自分がそこにどのように関わっていくかを考えることです。それが音楽を学ぶ人間のほんとうの文化的成長ではないでしょうか。