さて、メジャー・ペンタトニック・スケールは、日本語では四七抜き音階という呼ばれ方をされることがあります。四七抜き音階とは、七音音階(例えばメジャースケール)を基準とし、そこから派生的に、音が欠けているという視点から考えられた概念です。つまりメジャー・ペンタトニックスケールとは、メジャースケールの4番目と7番目の音を抜いた音階に丁度一致します。さて4番めと7番目の音が抜けているとどうなるでしょうか。音階内に半音、つまり短2度とその転回形としての長7度の音程が発生しないことになります。それから、伝統的な和声理論には不可欠な、増4度/減5度も発生しません。七音音階に基づく音楽(クラシック音楽等)では、増4度/減5度の不協和音程を和声進行にしのばせることで、緊張ー弛緩というモデルになぞらえられる、強い音楽的方向性をもつ終止形(ケーデンス)を獲得しました。ところが、このようなメジャー/マイナーペンタトニック・スケールは、そのような終止形を構成するために必要な不協和音程を欠いているために、それだけでは明確な終止感や音楽的方向感を示す和声進行を作ることができないのです。ベラ・バルトークはこのような特徴に注目し、ペンタトニックの旋律(ハンガリー民謡等)に対する、従来のやり方とは違った、もっと自由な和声付けの可能性について論じています。バルトークの作品を含め、実際の作曲においては、一つのペンタトニックスケールのピッチ素材だけでなく、他のスケールに由来する素材(和音等)と組み合わせられたりすることが多いです。たとえば、坂本龍一さんの有名な「戦場のメリークリスマス」ではマイナー・ペンタトニック・スケールによるメロディが主に使われていますが、伴奏部分の和声は主にエオリアン・スケール(ナチュラルマイナー・スケール)によって構成されています。このようなやり方はポップス、ロック、クラシック等、あらゆる音楽で見つけることができるでしょう。
— Otonoki Music School 音の木ピアノ&ギター・ウクレレ教室 (ロンドン)
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