2024/08/26

ウクレレの選びかた(サイズについて)

教室にウクレレを習いに来られる方には、まだ楽器を持っていない初心者の方が多く、最初から持っている方は逆に少ないかもしれません。そのため、来られた生徒はまず楽器選びから始めることが多く、その際には色々とご相談に乗らせていただいています。

ウクレレには、調弦の異なるバリトンを除けば、ソプラノ、コンサート、テナーの3種類があり、順に小さいものから大きくなります。日本では、初心者の方、特に手の小さな子どもや女性、小柄な方は、一番小さなサイズのソプラノウクレレを楽器屋などで勧められることが多いようです。

しかし、ギターを弾き、教える立場からすると、ウクレレを選ぶ際にサイズをあまり気にする必要はないと感じます。ギターの場合、クラシックギターの標準的な弦長は650mm、短いもので630mm、さらに子供用には580mmや540mmといったサイズがあります。これらはすべてウクレレのテナーサイズよりもはるかに大きいですが、特に問題なく演奏されています。

むしろ、楽器が小さいことによるデメリットの方があるかもしれません。弦長が短いとフレット間が狭くなり、押さえるコードによっては指を入れるのが難しい場合があります。弦が柔らかく押さえやすいという利点はありますが、その一方で適切な力で押さえないとピッチが不安定になることもあります。そういう意味では、ソプラノウクレレは、どちらかといえば、ある程度演奏に慣れた人向けの楽器と言えるかもしれません。

そのため、はじめてウクレレを選ぶ際には、初心者だから、小柄だからと小さい楽器が良いのだときめつけずに、音の好みや、実際に抱えたときの、快適さや見た目など他の要素を重視して選ぶのがよいでしょう。初心者にとっては、まずは毎日弾こうと思える楽器が良い楽器です。ソプラノはコンサートやテナーに比べて音の減衰が早く、それが「ウクレレらしさ」として評価されることもありますが、何よりもまずは自分がその音を気に入るかどうかが重要だと思います。

2024/08/02

好みの音

ギターの生徒がとある曲を練習しているのですが、ある特定の音にどうしても違和感があって、曲としてはその音のほうがまとまりが良いのかもしれないと思いつつも、別の音のほうが良いのではないかと思ってしまうと言っていました。なるほどと思います。

作曲家の團伊玖磨さんが、子供の頃ピアノを習っていたときに、クレメンティのソナチネのある部分が気に入らず、もっと綺麗だと思うやりかたに、自分で勝手に直して弾いていたのだとおっしゃっていました。家ではそうやって自己流で弾いていたのですが、ある時ピアノのレッスン中に先生の前で、つい直した自分のバージョンで弾いてしまった。先生はもちろん直ぐに気づき、どうしてそういう風に弾くのかと尋ねられたそうですが、理由を話すと、「あなたには好みがある」「好みがあって自由に弾くことはけっして悪いことではない」等とほめてくれたそうです。團伊玖磨さんはその後、そのまま好みが昂じて曲を書くようになり、結局作曲家となりました。

教える側としては、はっきりとした好みや意見がある場合はまずそれをやらせてみるのが良いと思います。良いアイデアであればそれで良いだろうし、もしそれがあまり良いアイデアでないならば、特別に理論を持ち出さずとも、自ずとわかってくるのだと思います。作品の勝手な変更や改ざんはけしからんと言う人もいますが、過去の作品に対して自由に加筆したり、変更したりということは、伝統的にはごく当たり前に実践されてきた事実があります。

曲のある部分がおかしいと感じるのはある意味で当然だとも思います。いろいろな音楽的、文化的バックグラウンドを持った人みんなが一つのメロディーを同じやり方で弾いて満足するというのはいささか奇妙です。一人ひとりにあった音楽があるのではないでしょうか。

そういう「あそび」や「実験」は、グレード試験等を含む教育システムからは、はみ出してしまいます。残念ながら、あなたのやり方は間違っているの一言で終わりです。しかし、そうやって、何かしらの不満を持っている人たちが、様々に試行錯誤しているうちに、音楽は面白くなり、多様性が生まれてくるのではないでしょうか。