楽譜上にあらわれる太字のf・pとは、それぞれforte(強く)、(弱く)を意味する省略形です。そのfとpを組み合わせたfp、すなわちフォルテピアノというものもあります。fp(フォルテピアノ)とは通常、強く弾いた(フォルテ)後に、突然、もしくは次第に弱く(ピアノ)するという意味です。一方で、pとfの順が逆になったpfという記号もあります。上記のfpの例から類推すればピアノ・フォルテ、すなわち弱く弾いた後にすぐに強くするということになりますが、実はそうではありません。pfにおけるpはpianoの略ではなく、poco(少し)、あるいはpiu(よりいっそう)の略だということです。つまりpfとはpoco forte(少し強く)、あるいはpiu forte(より強く)の意味になります。
上記の譜例を見てください。マテオ・カルカッシによるギター教本からのもの(Allegretto in F major)です。中段にpf(赤丸で囲んだ部分)が出現しますが、先ほどのピアノ・フォルテ(弱く開始し、強くする)の意味で捉えてしまうと、ギターの音楽としては 意味がよく通らなくなってしまいます。ここではやはり少し強く(poco forte)、あるいは直前のmf(青丸)のセクションよりも強く弾く(piu forte)の意味で捉えるのが自然です。pfで始まる同セクションの終わりにf(黄丸)の指示が出てくることを考えると、ここでは少しだけ強く—あまり強すぎないように—弾くのが良いでしょう。
ちなみに、ダニエル・ゴットリーブ・テュルクは1789年に出版した著書クラヴィーア教本の中で、pfについて「一部の教本で説明されているように、piano forte、つまり弱強を意味するのではない」と断り書きをいれていますが、これはつまり現代の私達だけではなく、18世紀にはもうすでに混乱がある記号だったということを示しています。
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